あの《みをつくし料理帖》が帰ってきた……! 登場人物のその後の物語《特別巻・花だより》

このブログを書き始めた時から、そのうち絶対に熱く語りたい!!と思っていた作品、髙田郁さんの時代小説《みをつくし料理帖》のこと。累計部数330万部を超える人気作品ですし、二度もドラマ化しているのでご存知の方も多いかと思います。

本編は第一巻の《八朔の雪》から第十巻の《天の梯(そらのかけはし)》まで。番外編として、《みをつくし献立帖》というカラー写真入りのレシピ本1冊が刊行されています。

2014年8月に《天の梯》が発売されて本編が完結してからも、そのあとがきにあった「いつか主人公たちのその後の話をまとめた特別巻が出せたら……」という髙田さんの言葉に期待していたファンは多かったはず!

その、待ちに待った特別巻《花だより》が、満を持して9月8日に発売されたのです……!!(涙)

《みをつくし料理帖》の魅力とは

《みをつくし料理帖》は、大坂出身の女料理人・澪(みお)が、不慣れな江戸の地で「つる家」の調理場を任され、数々の苦難に見舞われながらも、その料理の才覚とひたむきな人柄で道を切り拓いていく物語。

幼い頃に両親の命を奪った大坂の大水害、そしてそこから生き別れになってしまった幼馴染の野江。その野江が吉原で「伝説の花魁」になっていることを知り、なんとかそこから助け出すために奔走したり、身分違いの恋に引き裂かれるような想いをしたり……。

それだけでも十分ドラマチックで読み応えがあるのですが、みをつくし料理帖の見どころは、ストーリーを彩る数々の《料理》。冷蔵庫など便利な調理機器のない江戸時代、旬の食材を大切に扱い、手頃な価格で食べた人の心や身体を元気にする献立を、澪が一生懸命考える様子は、さながら推理小説のようなのです。

 

そしてそれを食べた人の笑顔や涙が目に浮かぶような、繊細な描写……。本文中には絵も写真もないのに、文章だけでここまで人の食欲ってかき立てられるのね!と作者の表現力には驚かされるばかり。

それぞれに後悔や痛みを抱える登場人物たちの、お互いを思いやる温かい言葉もたびたび胸に刺さります。

泣いて、笑って、ほっこり和んで、お腹が空く……《みをつくし料理帖》は私にとって、そんな体感をフルコースで味わえる、至高の作品。それに加えて、私は読むと必ず、大切な人に美味しい料理を作ってあげたくなります^^

読む前は、時代小説ってとっつきにくそう……と感じていた私ですが、言葉遣いも易しく、時代小説初心者にもオススメなのです。

特別巻《花だより》の構成・中身とは?

そんな魅力たっぷりの《みをつくし料理帖》。先日出たばかりの特別巻《花だより》の構成は、全4編の短編集でした。短編とは思えないほど、目に浮かぶ情景が色濃く、読み応えがありましたよ〜^^

全編に共通しているのは、本編《天の梯》の3,4年後が舞台であるということ。澪たちが大坂に帰ったその後の物語で、本編同様各作品に必ずキーとなる料理が登場します。

まだ読んでいない方のために、ネタバレにならない程度に、各作品の背景をちょこっとだけ解説♪

・花だより −愛し浅蜊佃煮

つる家の店主・種市が主人公。澪たちが江戸を去り、年に一度の便りを楽しみにしていたものの、ある出来事を機に、澪に会いに大坂へ向かうことを決意します。でもその道のりは、年老いた種市にとって平坦ではなく……。

澪がいなくなった後、政吉とお臼夫婦、りうやふき、おりょうが切り盛りしている「つる家」。江戸で暮らす面々の、その後がわかってひと安心^^ 戯作者の清右衛門や版元の坂村堂も、もちろん健在です!

・涼風あり −その名は岡太夫

本編には出てくることのなかった、小野寺数馬(小松原)の妻・乙緒(いつを)が主人公! 澪との辛い別れを経て夫婦となり、既に子も授かっている二人の関係性を描く物語。

無愛想で多くを語らない小野寺が、何を想い乙緒にどう接してゆくのかが分かり、思わず「小松原様、良かった……!」を胸を撫で下ろしました。小野寺の妹・早帆や、亡き母・里津がキーパーソンになっています。

・秋燕(しゅうえん) −明日の唐汁(からじる)

「あさひ太夫」の名を捨て、大坂で生家・淡路屋を再興した野江。幼馴染の澪や、先代の奉公人の息子・辰蔵に支えられつつも、目の前に迫り来るある問題……。その鍵を握るのは、亡き恩人・又次。野江と又次の出会いやその絆が細やかに描かれていて、涙なくしては読めませんでした……。

淡路屋再興を支えた摂津屋助五郎の懐の深さもわかる、《花だより》の中で私が一番好きな作品です^^

・月の船を漕ぐ −病知らず

大坂の料理屋「みをつくし」で腕をふるう澪。源斉先生と夫婦となり、日々奮闘していますが、そこに忍び寄るのは恐ろしい疫病……。医師として窮地に立たされる源斉に、女房である澪はどう向き合いどう支えていくか。

澪はやっぱり澪だなぁ……と、「変わらなさ」になんだかほっとしました^^ 「食は人の天なり」という、澪の座右の銘を再確認する作品でもあります。

本編最終巻となった《天の梯》の巻末に、澪の料理屋「みをつくし」が西の大関位を獲った料理番付が載っているのですが、この4編はそこに至るまでの物語。4編も時系列に沿って並んでいて、《月の船を漕ぐ》のラストシーンではそう来るか……!と、また最初から読み直したくなるような仕掛けがあったり^^

いや〜〜もう髙田郁さんの才能には、惚れ惚れしっぱなしです♡

テレビドラマ《みをつくし料理帖》

ここまで熱く語った《みをつくし料理帖》、その人気ぶりからか過去二回に渡ってドラマ化されています。

・テレビ朝日版(2012年, 2014年)

最初は2012年と2014年に全2回のスペシャルドラマという形で、北川景子さん主演でテレビ朝日にて放映されました。私が《みをつくし料理帖》に出会ったのは、このドラマがきっかけでした^^

ドラマを観た目的は、又次役の高橋一生くんが観たかったから、なんですけど(笑)。

北川景子さん演じる澪はとても綺麗でしたが、後から原作を読むと、うーんちょっとイメージと違うかも、と……。野江役は貫地谷しほりさん、二人のキャスティングは逆の方が良かったのでは?と思ったり。

スペシャルドラマ2回分なので、ストーリー的には第一巻から第三巻までの美味しいとこどりといった感じ。本編でのキーパーソンが省かれていたりと、原作ファンからするとちょっと物足りなかったかも……?

でもこのドラマ(と高橋一生くん・笑)あっての作品との出会いだったので、そこは本当に本当に感謝なのです♡

・NHK版(2017年)

そして昨年放映されたのが、NHKによる全8回のドラマシリーズ。澪役は黒木華さんで、これはイメージにぴったり!!! 小松原役の森山未來さんや、種市役の小日向文世さんなんかもハマっていて、原作に対する愛を感じる作品でした^^

全8回でどこまで進むかな……?というのが気がかりでしたが、第一巻から第四巻までを割と忠実に再現していましたね。

そして最終回の思いっきり「ニオわせる」終わり方に、是非とも同じキャストで続編の制作を……!と高まる期待。私は8回とも録画してあるので、時々懐かしく見返してますが、TSUTAYA TVやU-NEXTで動画配信もされてますよ♪

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《あきない世傳 金と銀》も、めちゃくちゃオススメ!

この《花だより》をもって、《みをつくし料理帖》の世界は本当に完結。ファンとしてはものすごく寂しいですが、私は高田さんが今執筆されている《あきない世傳 金と銀》も、すごーく好きなんですよね^^

こちらも舞台は大坂。一巻を書店で買おうかどうか迷っていた時に、手にとってパラパラと眺め目に入ってきたのは、「天満」「船場」といった慣れ親しんだ大阪、「津門」「武庫川」といった私の地元・西宮の地名の数々……!

それに勢いづいて読み始めた《あきない世傳 金と銀》でしたが、これもまた《みをつくし料理帖》に勝るとも劣らない名作なのです。不遇な身の上から、大坂の呉服商・五鈴屋に奉公に出された主人公・幸(さち)が、数奇な運命に翻弄されつつも商いの才覚に目覚めていく、商人の物語。

個人事業をやっているものとして、背筋が伸びるような名言も盛りだくさんなのです。

現在は5巻まで刊行されていて、これまでのペースからするとそろそろ6巻が出る頃かなーなんて思いながら、角川書店のホームページをチェックしたらまさかの《みをつくし料理帖》特別巻発売のニュース! 一瞬で狂喜乱舞した私でした(笑)。

6巻の発売は少し先になるかもしれませんが、花だよりを読みつつ、こちらも楽しみに待ちたいと思います♡

おわりに

これまで読んだ小説の中でベスト3を選ぶとしたら?と聞かれたら、確実に選ぶであろう《みをつくし料理帖》。作中のレシピで実際に作ってみたものも幾つもあるので、それはまたおいおいと^^

花だよりを読んで、一番興味を引かれた《唐汁》も、近々作ってみようかなぁ。

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この記事を書いた橘花(kikka)ってこんな人